〔書評〕ビクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』1862年〔第2回〕
写真は、3月にロンドンで見たレ・ミゼラブルのミュージカルです。
舞台の下でオーケストラが演奏していて、臨場感はバツグン!
物語の主人公、ジャン・バルジャンは、幼くして無実の罪を着せられて、投獄されてしまいます。
何度も脱獄を繰り返してはつかまり、刑期は延びに延びて、結局刑期を終えたのは40代。
人生の大半を無為にし、絶望のどん底を這いずり回る彼は、お金もなく、街で強盗を繰り返します。
ある時、強盗を目的に立ち寄った家で、彼は、ミリエル司教と出会います。
司教は、身元も知れない彼を尊大な心を以て受け入れます。
初めて人のやさしさに触れたジャン・バルジャンは回心し、失った時間を取り戻すために奔走します。
場面は変わり、ファンティーヌというシングルマザーが登場します。
彼女は、女で一つで娘を育てていくうえで、面倒が見切れないため、テナルディエという夫婦に娘を預けます。
再び娘と二人で暮らす日々を夢見て働いていきますが、女性の権利が保障されていない世の中であるため、ちっともお金がたまらず、生活は好転しません。
加えて、テナルディエ夫婦は、彼女からお金をむしり取ろうと、娘をだしに使って彼女に追い打ちをかけます。
生活が困窮し、心身ともに限界を迎えたころ、道端でマドレーヌという市長と遭遇します。
彼は、病床のファンティーヌから娘をテナルディエ夫婦から取り戻すよう託され、娘・コゼットを迎えに行きます。
このマドレーヌこそ、回心し、産業で成功を遂げた、ジャン・バルジャンだったのです。
ファンティーヌは息を引き取り、コゼットとジャンバルジャンは一緒に暮らしていくこととなります。
コゼットとジャン・バルジャンは人のやさしさに触れたことがないという点で感情を共有していたのでしょう。
ジャン・バルジャンがコゼットに、特大のお人形を買い与えて、コゼットが無我夢中になって遊ぶシーンはとても印象的です。
コゼットは生まれて初めて、幸福を感じたのです。
その後、物語は7月革命のころのパリへと移り、
社会の不満と権力との闘争を描きながら物語は進んでいきます。
重い話ではありますが、自由を求める人間の心模様や、人間の醜さが巧みに表現され、自分を見つめなおすきっかけになるかもしれません。
ながーい小説が好きな方にお勧めです。