〔書評〕レマルク『西部戦線異状なし』1929年〔第一回〕
いつだったか、ボブディランが影響を受けたと語っていました。
舞台は、第一次世界大戦。
ドイツ軍によるベルギー、フランス領への侵攻に従軍する主人公パウル・ボイメルは、人間の命が簡単に失われる環境下に2年間身を置いてきた二十歳の青年です。
満足に食事が摂れないことに加え、いつ来るかもわからない敵の襲撃に備えなければいけないため、昼夜を問わず心身はすり減らされていきます。
仲間が足を失っても、命を絶たれても、感情は凍ったように平静を保ちます。
ある時、パウルは2週間の休暇をもらって故郷に帰還します。
この場面での主人公の感情の推移の表現はかなり素晴らしいです。
2週間の休暇をもらったパウル。普通に考えれば、素直に喜びそうなものですが、彼はここでも平静を保ったままです。
いざ、帰郷する電車に乗り込むときに至って、やっと故郷に帰りたいという気持ちがふつふつと湧き上がってきます。
ところが、だんだん見知った駅名が目に入ってくるとともに嫌な感情へと変化します。
家に着くと姉や母親との対面を果たしますが、感情はここでも平静を保ったまま。
街を歩けば、軍人だからいいものを食べているのだろうと、色眼鏡で見られる。軍人の苦しみなど知る由もない、或いは知ろうともしない人々と出会い、やり場のない怒りにかられます。
自分は何のために戦っているのか。戦った先に何がるのか。
国によってすべてを捨てさせられ、軍人に身を投じた彼はこう考えます。
軍人でなかったら自分は何をしていただろうか。
周りを見れば、会社に所属して、家屋の一室で仲間と仕事をする人々がいる。
自分も戦争がなければ、こんな生活ができていたのだろうか。
彼はこう思ったと同時に、
こんな窮屈なところ、俺には耐えられない。と、考えます。
戦争に嫌気がさし、平穏な生活を望むも、いざ平穏を目の当たりにすると、耐えられないと感じてしまう自分がいる。
彼の精神は意図せずして、戦争と一体化してしまい、どこにも拠り所を持たなくなってしまったのです。
この後も物語は続きます。
まだ、読んでいる途中ですが、印象に残ったので投稿しました!
外国の古典が好きなので、過去に読んだものも含めて、今後も書評をたびたび書いていくと思います。*あくまで、個人の主観です。